「四畳半神話大系」森見登美彦/大学での怪しく魅力的な日々

本

大学生活って色々ありますよね。あーもしもあの時違う選択をしていたら……

森見登美彦さんの四畳半神話大系をご堪能あれ。

四畳半神話大系|森見登美彦

 

「大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう」

 

“薔薇色のキャンパスライフ”を夢見る、誇り高き三回生の「私」。しかし現実はほど遠く、実り少ない二年間が過ぎようとしていた。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。

 

いっそのこと、ぴかぴかの一回生に戻って大学生活をやり直したい!

 

もし、あの運命の時計台前で、映画サークル「みそぎ」に入らず、ほかの道を選んでいれば……。
もし、あの運命の時計台前で、奇想天外な弟子募集に応じず、ほかの道を選んでいれば……。
もし、あの運命の時計台前で、ソフトボールサークル「ほんわか」に入らず、ほかの道を選んでいれば……。
もし、あの運命の時計台前で、秘密機関〈福猫飯店〉へ入らず、ほかの道を選んでいれば……。

 

迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、不毛と愚行の青春奇譚。

四畳半神話大系公式サイトより引用

 

この小説はアニメ化もされており、知っているひとも多いのではないでしょうか。映画化された「夜は短し歩けよ乙女」とも共通する世界観を持っていて、映画を見る前に四畳半神話大系を読んでおくと、より楽しめるかも!

 

今回は原作小説をメインに紹介します。この物語は主人公の選択によって未来が分岐します。

 

例えばあなたが学生時代にほかのサークルや部活を選んでいたら、また違ったキャンパスライフを送っていたかもしれません。もっとキラキラした生活だったでしょうか。出会う人も違いますから、恋愛模様も変わっていたかもしれません。

 

森見登美彦さんの小説、読めば読むほど怪しげな雰囲気が漂ってきます。路地に入ると何が起こるかわかりません。しかし描かれる京都はとても魅力的です。いざ本を開き読み始めると物語に引き込まれページをめくる手が止まりません。不思議です。恐るべき森見ワールド。

 

1.ひたすら怪しい

 

物語は、まさにこの「森見登美彦ワールド」といってもよい独特の怪しさを放つ世界で展開します。舞台である京都、大学生の自由で堕落した生活。時に悩みを抱え、時には悪友に振り回される日々。それらが混沌と独特の文体で迫ってくる京都は、非常に蠱惑的です。

 

しかしそれは皆さんの経験したことのある、あの頃の思い出がどこかに詰まっています。淡い恋物語や、何かをなそうと思いつつ何もできない休日。なぜかいけない授業。溶け込めない集団もあれば、居場所もある。意外とそこら中にいる、浮世離れした留年生。

 

さあ少し覗いてみましょう。

 

大学生活の冒頭は共通してこうはじまります。

 

大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか。

四畳半神話大系p5より引用

 

そう、この物語は恋愛ドラマに描かれているような、キラキラしたキャンパスライフを描いたものではありません。(なんの曇りもないキラキラした大学生活をみると、目をそむけたくなるのは私だけ?)

 

しかしどうして主人公を取り巻く環境やその大学生活は非常に魅力的です。実際私の友達に、この小説を読んで京大に行きたくなったという人もいるほどです。

 

バラ色のキャンパスライフを夢見て期待に胸を膨らませる主人公。その行く末はどうなるのでしょうか。

 

2.個性が強すぎる登場人物

 

独特の世界に登場する人物は、個性が強いと相場が決まっています。川を流れる落ち葉のように流され大学生活を送る主人公とは対照的に、皆それぞれ何かに没頭したり、個性を振りまいています。今回は2人だけ簡単に紹介します。

 

まずは主人公につきまとう悪友、小津。主人公に降りかかる、ほとんどの災厄の元凶でもあります。学生時代、皆さんの周りにもどこか怪しい人がいたのではないでしょうか。その方を500倍怪しくし、悪知恵を吹き込こみ、一切のさわやかさを取り払うと小津になります。

 

しかし彼にはどこか憎めないところがあり、また人間らしくもあります。きっとそこが彼の魅力なのでしょう。

 

そして主人公が恋心を抱く二回生の明石さんです。彼女は猫のような人で、つかみどころがなくそして近づきすぎてもどこかへ行ってしまいます。それぞれの世界で明石さんとの恋模様はどのように進むのでしょうか。

 

イラスト/中村佑介 ©四畳半主義者の会

あなたも読み進めていくうちに明石さんに心惹かれていくかもしれません。

 

3.どれを選んでも?

 

この小説は4つの平行世界を描いており、4部構成となっています。それぞれ違うサークルや組織に入ったときの生活を描いているわけですが、世界観や設定は共通しています。そしてここが重要なのですが、主人公の生活にあまり変わり映えはありません笑

 

その中で、ある話で登場した人物が別の話で掘り下げられたり、様々な謎を解くヒントが各話にちりばめられています。そう、読めば読むほど世界に深く没頭し物語はよりこちら側に近づいてきます。

 

1回目を読んだ後にもう一度四畳半神話大系を開けば、四畳半のあらゆる可能性がより深く迫ってきます。もしかすると本を読んでいるだけでは飽き足らず、京都へ足を延ばして鴨川や下鴨神社へ赴き、猫ラーメンを探し歩いてしまうかもしれません。

 

(私は行ってしまいましたが、実在するかわからない猫ラーメンへはたどりつけませんでした)

 

 

小説にとっつきにくい方は、アニメで楽しむのも良いかもしれません。見終わるころにはきっと原作が読みたくなっているでしょう。もし読み終えた時もっとこの世界に浸っていたい!という方は、「夜は短し歩けよ乙女」もおすすめです。

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